2010.06.06

いただきもの、読みました。

科学哲学をやっている知り合いから、本を寄贈していただいた。あー、そういえば「今本書いているんだけど、福岡伸一の『動的平衡』の概念について教えて」とか言われて、何回かメールをやりとりしたっけか。あの時言っていた本ができたのね。ちなみに私は福岡先生、文章力以外は全く評価していません。そのへんは、書き出すとすごーく長くなるし、私も福岡ウォッチャーではないので、ここで私がどーのこーのと言うよりはこちらのブログの福岡伸一批判を見るのが早いかと。

ま、それはさておき、せっかく頂いたので読んでみましょう。本はこちら。

理系人に役立つ科学哲学

理系の人向けにわかりやすく解説した科学哲学の解説。「推論とは何か」「科学であるための条件」「科学と実在」「原因とは何か」「科学理論とは何か」などなどをわかりやすく説明している。
内容はわかりやすいと思ったけれど、ちょっと説明する内容が盛りだくさんすぎて一つ一つの解説が短いかなあ。あと、実際の科学理論や科学史からの例が豊富にあると良かったような。例えば、

  • N線のエピソードから『観測の理論負荷性』を語る
  • ランダウのオーダーパラメータの理論から科学的対象の実在性について議論する
  • 二重盲検法にからめて『因果関係とは何か』を追求する

などなど。…でもたぶん、こんなことを本気でやったら、執筆うん年、400ページは軽く超える大著になるだろうから、専門のライターじゃない研究者じゃあ無理だよねえ…。

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2010.02.24

『代替医療のトリック』

昨日は布団にくるまって『R-1グランプリ』見ながらサイモン・シンの新作『代替医療のトリック 』を読んでいたら寝違えた。首が痛い。

それはともかく、『代替医療のトリック』。現代医学の最大の武器である、『エビデンスに基づく医療』(統計的に有効性が確認されている手法こそ有効な治療法である)の立場から、鍼にホメオパシーにカイロプラクティックにハーブ療法と、認めるべきところは認めながらも切っていきます。鍼はほとんど効果はなさそうでホメオパシーは完全なプラセボ、カイロは腰痛にはある程度使えるが首まわりの矯正で危険なことになる場合があり、ハーブは玉石混交だが副作用にもっと注意を払うべき、と。付録では指圧やレイキなどの日本発の代替療法などまで登場します。こういったものをエピソードをうまく混ぜながら読ませるサイモン・シン、さすがです。とりあえずまずは統合医療の推進なんて言っている長妻厚生大臣に読んでいただきたいですね。そんなんに回す金があったら医師不足解消に使ってくれ、と。

しかし最終章、『代替医療の蔓延に責任のある人達』のなかに『研究者』があるのは、ちょっと耳が痛い。真面目に代替医療を批判しなかったのが問題だ、というのは、『代替医療』を『疑似科学』に置き換えると、そのまま私ら宛の批判になっているので。金にも業績にもならんし、下手をすると訴えられたりしかねないのだけれど、それでも真面目に疑似科学を叩かにゃならんかなあ…。

とりあえず、今日は首が痛いので、カイロプラクティックでも指圧でもなく、サロンパス貼って、寝ます。

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2008.11.02

今日は酷い本を紹介します。

今日は先日買った『プライムナンバーズ -魅惑的で楽しい素数の事典 』という本を読んでいたんだが、翻訳の酷さにぶちきれそうになった。
この本は素数に関する色々なネタの事典をabc順に並べたもの、ということで、後に定義がでてくるものが先に使われたりしていて、どう読んでいいものか悩ましいんだが、翻訳の酷さがその読みにくさに拍車をかけている。例えばp.46では、

ディクソンは1904年に、…(中略)…を満たすnの値が無限に存在します。

と日本語になっていない文章が出てくる。これはまだ可愛いほう。
p.53では「7で割り切れるかどうかの判定の難しさ」を述べた後に、
他の数については容易に判定できる方法があります
とあるが、多分これは
「他の数については容易に判定できる方法があることもあります。
の間違い。上だと『他の数全てについて容易な判定法が存在する」ことになるけれど、そんなことないよね?

p.68。ポール・エルデシュについての項では『素数の逆数の和は収束する』などと嘘を書いている。ちゃんとp.83では『素数の逆数の和が発散する』と書いてあるのだが。大体p.68の文脈は「単調増加数列の逆数の和が収束しない場合に○○が言えるという予想があるが、その結果を素数の列にも適用できる」という展開なので、ここで収束されたら論理的に困るのだ。チェックすれば簡単に見つかった間違いなのに、編集部もわからなかったのか?

その他、数列Pnを定義した後Pnを全く使わなかったり、おそらく関係代名詞まわりを直訳しすぎて日本語の流れがおかしかったり…とにかく疲れる。監訳者の人何やってる人…?情報科学系?整数論の専門家じゃなくて?
オライリーさん、数学の本を出すなら、ちゃんと専門の数学者を監修につけてよ!

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2008.05.05

疑似科学入門。

それは昨日のこと、『疑似科学入門 (岩波新書 新赤版 1131)』なる本を本屋で発見したのであります。著者は物理学者の池内了先生。ぱらぱらと立ち読みして、ううん、これは、いまいちでは、などと頭を抱えていたのであります。

で、今日はこの本について書こうと思っていたのですが、何分立ち読みで読んだだけでは読み間違いその他がないか不安になる。人を批判するときは慎重になりたい。
ということで、今日改めて本屋に行き購入。
まあ、700円だし。スープカレーを一回我慢してなか卯の牛丼にすれば済む値段だし。

ざっと読み直してみたけれど、うん。初見とそれほど感想が変わらない。
まずこの本では擬似科学を3種類に分類する。占い、血液型判断、超能力、『擬似宗教』などの第一種。マイナスイオン、クラスター水などの商業と結びついた第二種。そして環境問題などで、『地球温暖化は二酸化炭素のせいかどうかは不明である』などと判断を停止する主張を第三種と名づけている。
そして第一章、第二章では第一種、第二種の擬似科学について解説、第三章で擬似科学の流行る背景を述べ、第四章で第三種の擬似科学について述べ、最後に擬似科学と科学の見分け方について纏めている。

しかし、この本の内容は納得が行かない。例えば血液型性格判断にしても、否定的な実験結果を出した結果を引用せずに『間違っているに決まっている』と断罪する。他にも、さまざまな擬似科学を批判するのはいいが、批判の根拠を示さす、単なる著者の独断である印象を与えている。第三章に到っては完全な独断。擬似科学が流行る背景にあるのは科学が発達してすべて「お任せ」な社会になったからであり、その結果として皆が情報に対して受動的になったせいだ、と述べるに到っては、そのように判断する根拠は何?と思わず問い返してしまう。

他の擬似科学本では触れられていない、『第三種擬似科学』についても疑問がある。この本では、地球温暖化のような複雑すぎて現在の科学では正しいかどうかわからない問題については『予防措置原則』を用いるべきだ、と述べる。『正しいか間違っているかわからない時は最悪の場合を想定して動こう』という立場である。これ自体は、最近の環境問題などでは比較的よく使われる原則である(とはいえ、『予防措置原則』に外れるぐらいで疑似科学呼ばわりはどうよ?という疑問はある)。
しかし、『正しいかどうか分かる』ってのはどういうことだろう。例えば著者は「遺伝子組み換え作物」について、「安全と呼ぶにはまだ調べるべき項目が多くある」という。これは正しいかもしれないが、では何を調べれば安全と言い切れるのか、という問題については全く答えていない。これに答えてもらわないと永遠に遺伝子組み換え作物は「安全」にはなりえないんだが…。

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2008.03.11

『サナギさん』は理系4コマだと思う。

今朝の札幌は久しぶりの雨。真冬の雪より冷たく感じるのは、気温が低すぎて融けない雪に比べて、水が冷たく体の熱を奪っていくからだろうか。

そんな寒すぎる一日なので気分転換に『サナギさん 5 (5) (少年チャンピオン・コミックス)』を購入。
相変わらず施川ユウキはひねくれて物を見ることとくだらない事を考えることにかけては天才だ。「毒々しい赤、無数に並んだツブツブ、産毛…イチゴというのは冷静に見るとかわいくない」という発見から「イメージ戦略を仕掛けたイチゴの黒幕がいる」という発想にはどうやったらたどり着くのやら。

しかし個人的に心に響いたのは、主人公のサナギさんが三角形を沢山書いて、『内角の和が180°にならない三角形を見つけてみせる!』と頑張っている1コマ。私も数学だの何だので新しい定理を見るたびに―しかもその定理が素晴らしければ素晴らしいほど―絶対何か騙されているに違いないと感じ、あれこれと穴を探したりいろいと試したりと試行錯誤を繰り返す。定理を読んでへーそーなんだと納得するような素直な人間では研究者なんて出来ない。私と共通するサナギさんはきっと理系向けに違いない。…さもなくば、私が理系向けでないかだが。

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2008.02.07

今日の読書。

スティグリッツマクロ経済学 第3版』読み終える。

うん、判りやすいとは思った。思ったんだけれど。
いろんなものを数式で書いて欲しかったなあ。理系の人間としては。
グラフを書いてこの交点が重要でこれがこー動いて…などとやるのだけれど、微分方程式とかで書いていただければ一発で判るのに…などと思ってしまうのは物理だの数学だのやっている人間だからですか?

あと、『ミクロ経済学』の時も思ったのだけれど、スティグリッツ先生、そんなにIMFが嫌いですか?
90年代の東アジア通貨危機や東欧民主化の際のIMFの政策に対する攻撃が半端ねぇ。

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2007.01.04

正月休みの読書。

今日から研究室は正式に仕事始め。とはいえまだ人は少ない。学生さんたちはまだ冬休みだろうしなあ…。

理工系のためのトポロジー・圏論・微分幾何』読み終わる。いかにも物理の人が物理の人のために書いた本であった。だって、ほとんどの定理は証明しないんだもの。その代わり、この定理がどーゆーことを言わんとしているのか、とか、どういう現象を頭においてこういう事を考えるのか、というところを丁寧に例示している。予備知識も必要無いように書いてあるので、数学専門ではない人でも十分に読める。うちの研究室でもトポロジー関係の話を聞くことがしばしばあるけれど、これを読んでおけばそれなりに話は分かるようになる…かな?
ただし真面目な数学者がこの本を読んだら怒り狂うかもしれない。なにせ、証明はしてないわ、定義よりも具体的な例を重視するわ、数学者からみたらいい加減極まりない本のような気がする。ということでこの本は数学者の目が届かないところで読むことをお勧めする。まあ、数学は確かに大事だけれど、数学者のいう事を全て真面目に聞いていたら物理なんてやっていられない。デルタ関数はおろか、三角関数を使うだけで二乗可積分性がどーのこーのと文句をつけられかねん。

それはともかく、この本、ホモトピー、ホモロジー、圏論、微分幾何と解説するのはいいんだけれど、最後の応用例に出てくるのが微分幾何オンリーとはこれ如何に。やはり微分方程式で記述される物理の世界では、ほかの連中の出番はないのかねぇ?

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2006.12.28

ついにここまで萌えがキタ。

正式には仕事納めの今日。生協書籍部に行き、正月の友となる本を探していた私の目に飛び込んできた本が。

マンガでわかる物理 力学編

…ついに萌え物理本キターーー!!
パラパラとめくってみたが、テニスをネタに力学について語っているようだ。まあ、力学って物理の中では日常に近いし、実験もしやすいからねー。量子力学なんかだったらどうしようもなく難しい。朝永振一郎の『光子の裁判』を見習ってファンタジーにしてしまうとかしか思いつかない。主人公の前に現れる謎の少女。その少女は何故か大きなプランク定数を持っていた、みたいな。

それはともかく。

『萌え』本の最大の欠点って、ほぼ男性しか買わないことなんだよな。物理の業界というのは女性が少ないので、どーせなら女性にアピールする本の方が欲しいのですが。

例えば、最近『執事喫茶』なんてーのが秋葉原に出来て人気があるそうじゃないですか。だったら、ツンデレのヒロインに執事が物理を教える本なんていかがでしょう。ツンデレヒロイン目当ての男性客と、執事目当ての女性客、両方をターゲットにできて一挙両得!とか?

などと妄想していて、結局本を買うのを忘れたワタクシ。ま、研究室の蔵書で面白そうなものでも借りて帰りますか。

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2006.12.17

本の虫。

休日。することがないので、久しぶりにこのブログの『本のリスト』に手を入れる。右側の方に並んでいる奴ね。うーん、やはりマンガが多いなあ。『フェルマーの最終定理』と『生物集団の数学〈上〉人口学、生態学、疫学へのアプローチ』が浮いているではないか。『フェルマー』はともかく、『生物集団』の方は、研究に関係するかもと思い買ったのだが、とても数学な本だったので証明とかは全部読み飛ばしてしまった。やはり数学と物理では違う。物理の場合は具体的な方程式が与えられて、それから物語がはじまるわけだが、数学の場合は一般的な方程式を考えて、この方程式のこの項が以下の条件を満たすときはどうこう、などということを考える。お陰でそれがどういう方程式を考えているのか物理の人間にはピンと来ないことが多い。困ったものである。

困ったものといえば、この本は「上巻」なわけで、いつ「下巻」が出るのかというのも悩みの種だな。私が下巻や続刊を待っている本はかなり多いのだ。ティンカム『超伝導入門第2版』とか『科学論文の英語用法百科』とか…。

午後。札幌駅周辺を散歩。『皇国の守護者 2 (2)』を購入。しかし駅内の小さな書店のみならず、旭屋、紀伊国屋といった大書店、さらにマンガの充実が売りの筈の書店にすらないとは、なんという供給量の少なさであろうか。結局大丸に入っている本屋で発見したが、そこにあるのも2巻の平積みが4冊程度、最新刊の4巻の平積みが一冊のみで1巻3巻は発見できなかった。

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2006.12.10

今日の読書。

今日も本屋に『サナギさん』は見つからず。札幌駅の紀伊国屋書店には明日入荷だとか。うーん、明日から東京出張なのだが…。「出張前に本屋で見かけて購入→プレゼンの作成そっちのけで没頭→翌日のプレゼンぼろぼろ」という3段コンボが目に見える~。

…まあ売っていないのは仕方ないので、ブックスカフェで珈琲を飲みながら『ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する』を読む。半分ぐらいまで読んだが、これはなかなか面白い。経済学の手法を用いて、八百長のインセンティブ、KKKと情報の経済、麻薬密売組織の構造などを明らかにしていく。また今度機会があったら後半も読もう。

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