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2013.07.27

たまには真面目に論文の不正について考えてみる。

日曜日に名古屋に行ったついでに本屋に寄って『Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか 』を購入。月曜日に読み終えた。人間関係よりプログラム書くのが好きな優秀な人達をどうやってまとめるのか、という内容は大学の研究室運営にも活かせるかなあ、と思いつつ読んだが、活かせるところ、あったりなかったり。風土を作ることの重要性や上司の管理方法などは使えても、ユーザーとのコミュニケーションとか大学の研究ではないしね。

そんな始まりの一週間だったが、月曜日に研究における不正行為について講習を受けたり、水曜日ぐらいに東大で大量の論文不正が起きたというニュースを見たりして、少し研究室の運営とかについて真面目に考えてしまった。

教授への一問一答では、「グループ同士を競わせたのがプレッシャーになった」「性善説をとったのがだめだったのかも」という事だったが、むしろミッションステートメントとその評価手法の間の乖離が問題ではなかろうか。

大学の研究のミッションは「研究を通じて社会に貢献する」ことだと思う。まあ貢献と言ってもいろいろあって、「知識はそれ自体価値がある」と考える理学部の人の研究は工学部あたりから見たら何の役にも立たんという事になるんだが、それは「何をもって貢献と考えるか」という価値観の相違である。

一方、実際に多くミッション達成度の指標として使われるのは、出版された論文、特に論文掲載誌のインパクトファクターである。しかしこのミッション評価としてインパクトファクターはあまり良いとは言えない。あちこちで言われていることではあるが、研究分野によってインパクトファクターは異なるし、大量に引用されている論文でもインパクトファクターが小さいことは多い(逆に、インパクトファクターが高い論文誌でも4分の1は一度も引用されたことがないという噂もある)。そもそもインパクトファクターを提供しているThomson自体が「インパクトファクターは優れた業績を過小評価する恐れがあるよ」と言っている。

今回の大量捏造は、インパクトファクターの高い論文誌に載せるようにプレッシャーをかけたことで、本来のミッションを忘れられ、NatureやCellでの論文出版がミッションと勘違いされたことが問題ではないかと思うのだ。そら論文出版するのが目的なら捏造データを使えば載るだろう。ただし本来のミッションとは逆行するよね。

で、このよーな事が起きないようにどうすべきか。

私が思いつくのは、

  • 研究室内でのミッションの共有。特に論文出版はミッション達成の一つの指標ではあるがミッションそのものではないということの確認。
  • よりミッション達成度を測るのに適切な評価法の導入。

の2つだが、前者は研究室運営の中でなんとかなるとして後者は可能かなあ。今のビッグサイエンスの技術を使って新しい指標を開発するとか出来るといいんだけど。altmetricとかはどうなんだろう?

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